高齢者の熱中症は「室内でも」起きる
熱中症は、炎天下での屋外活動中に起こるものと思われがちですが、室内で安静にしているときにも発症します。特に高齢者では、自宅の居室や寝室で、本人が暑さに気づかないうちに症状が進むことがあります。
日本では毎年、熱中症によって多くの人が救急搬送され、その中で高齢者が大きな割合を占めています。重症化して命に関わることもあるため、「家の中だから大丈夫」と考えず、日頃から室温や体調を確認することが大切です。
高齢者が熱中症になりやすい理由
暑さに気づきにくい
加齢に伴って温度に対する感覚が鈍くなり、室温が上がっていても暑さを自覚しにくくなることがあります。そのため、本人の感覚だけに頼らず、温湿度計で室内の状態を確認することが重要です。
のどの渇きを感じにくい
高齢者は体内の水分が不足していても、のどの渇きを感じにくい傾向があります。水分を取る量が少ないまま暑い環境で過ごすと、本人が気づかないうちに脱水が進むことがあります。
体温を調節する力が低下する
汗をかく機能や皮膚の血流を調整する機能が低下すると、体内の熱を外へ逃がしにくくなります。また、高齢者は若い人より体内の水分量が少ないため、少しの水分不足でも脱水の影響を受けやすくなります。
持病や薬の影響を受けることがある
心臓病、腎臓病、糖尿病、高血圧、認知症などがある人は、体温調節や水分管理がむずかしくなる場合があります。
利尿薬、一部の降圧薬、睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗コリン作用のある薬なども、脱水、立ちくらみ、発汗や体温調節に影響することがあります。ただし、熱中症が心配でも、薬を自己判断で中止・減量してはいけません。夏を迎える前に、注意点を医師や薬剤師へ確認しておきましょう。
夏の健康管理の基本
のどが渇く前に水分を取る
のどの渇きを感じていなくても、起床時、食事のとき、食事と食事の間、入浴の前後、就寝前など、時間を決めて少しずつ水分を取ります。水や麦茶などが日常的な水分補給に適しています。
一般的には、食事に含まれる水分とは別に、1日約1.2リットルが一つの目安とされています。ただし、必要量は体格、食事量、活動量、気温、発汗量などによって異なります。
心不全や腎臓病などで水分・塩分の制限を受けている人は、一律の目安を当てはめず、主治医の指示に従ってください。暑い時期の水分の取り方を、あらかじめ医師や管理栄養士へ相談しておくと安心です。
経口補水液を日常的に飲まない
経口補水液は、脱水状態の人に水分と電解質を補うための病者用食品です。普段の水分補給として毎日飲むものではありません。
製品によってはナトリウムやカリウムを多く含むため、高血圧、心臓病、腎臓病、糖尿病などがある人では注意が必要です。使用する場合は、熱中症による脱水に対応した製品か表示を確認し、可能であれば医師、管理栄養士、薬剤師などに相談してください。
エアコンを適切に使う
電気代への心配や冷房が苦手という理由から、エアコンの使用を控えると、室内でも熱中症の危険が高まります。暑い日は昼夜を問わず、無理をせずエアコンを使用しましょう。
冷房使用時は、実際の室温をおおむね28℃以下、湿度を60%程度以下に保つことが一つの目安です。ただし、体調や住宅環境によって快適な温度は異なります。暑く感じる、体調が悪い、室内に熱がこもるといった場合は、目安にこだわらず室温を下げてください。
「28℃」は室温の目安であり、エアコンの設定温度ではありません。設定温度と実際の室温が異なることがあるため、本人が過ごす場所の近くに温湿度計を置いて確認します。
扇風機やサーキュレーターは、冷房した空気を循環させるために役立ちます。ただし、非常に暑い室内では扇風機だけで十分に体温を下げられないことがあるため、エアコンと組み合わせて使用しましょう。
外出は時間ではなく暑さ指数で判断する
暑さの厳しい時間帯は日によって異なり、夕方になっても気温や湿度が高いことがあります。「夕方なら安全」とは限りません。
外出前に天気予報や環境省の暑さ指数(WBGT)、熱中症警戒アラートを確認します。熱中症警戒アラートが発表されている日や、暑さ指数が高い時間帯は、不要不急の外出や運動を控え、予定の延期・変更を検討してください。
外出が必要な場合は、次の対策を取ります。
- 日傘や帽子を使う
- 通気性・吸湿性・速乾性のある衣服を選ぶ
- 飲み物を持ち歩く
- 日陰や冷房のある場所でこまめに休む
- 保冷剤や冷たいタオルなどを活用する
- 体調に不安がある場合は一人で外出しない
周囲の人による見守りも大切
高齢者本人が暑さや体調の変化に気づいていない場合があります。家族や近隣の人、支援者は、「暑くない?」と尋ねるだけでなく、実際の室温や次の点を確認することが大切です。
- エアコンが使用されているか
- 水分を取れているか
- 食事ができているか
- 尿の量や回数が極端に減っていないか
- いつもより元気がない、ぼんやりしていないか
- 頭痛、吐き気、めまい、強いだるさがないか
熱中症警戒アラートが発表された日や、暑い夜が続くときは、電話や訪問による確認を増やすことも有効です。
熱中症を疑う症状
熱中症では、次のような症状が現れることがあります。
- めまい、立ちくらみ
- 筋肉痛、こむら返り
- 頭痛
- 吐き気、嘔吐
- 強いだるさ、力が入らない
- 大量の発汗
- いつもと様子が違う
- 返事がおかしい、会話がかみ合わない
- まっすぐ歩けない
- けいれん、意識障害
- 体が非常に熱い
高齢者では、食欲がない、反応が鈍い、ぼんやりしている、横になったまま動かないといった、はっきりしない症状だけの場合もあります。
熱中症が疑われるときの対応
熱中症が疑われる場合は、まずエアコンの効いた室内など、涼しい場所へ移動させます。衣服を緩め、首の周り、脇の下、脚の付け根などを保冷剤や冷たいタオルで冷やします。
本人の意識がはっきりしており、自分で安全に飲み込める場合は、水分を少しずつ飲んでもらいます。
次のような場合は、直ちに救急要請(119)をしてください。
- 呼びかけへの反応がおかしい、意識がない
- 自力で水分を飲めない
- けいれんしている
- まっすぐ歩けない
- 体が非常に熱い
- 涼しい場所で冷やしても症状が改善しない
意識がもうろうとしている人や、自力で飲み込めない人に、無理に水分を飲ませてはいけません。誤って気管に入る危険があります。救急車を待つ間も、涼しい場所で体を冷やし続けてください。
まとめ
高齢者は、暑さやのどの渇きを感じにくく、体温を調節する力も低下しているため、室内でも気づかないうちに熱中症になることがあります。
本人の感覚だけに頼らず、温湿度計や暑さ指数を確認し、エアコンの使用、こまめな水分補給、外出予定の調整を組み合わせることが大切です。家族や周囲の人も、室温、水分摂取、食事、普段との様子の違いを確認しましょう。
熱中症を疑う症状があり、自力で水分を飲めない、意識や受け答えがおかしいといった場合は、ためらわず救急要請(119)をしてください。
※STARTWELLは、病気の診断・治療・予防を目的とするものではありません。本記事は一般的な情報提供を目的としており、医師などの専門家による診断や助言に代わるものではありません。
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