「もしかして…」と感じたときの戸惑い

「最近、同じことを何度も聞くようになった」「約束を忘れることが増えた」「財布をしまった場所が分からなくなる」――。親の様子を見ていて、「もしかして認知症では?」と不安を感じても、どう対応すればよいか戸惑う家族は少なくありません。

認めたくない気持ちや、本人を傷つけたくないという思い、どこに相談すればよいか分からないという困惑が重なり、相談や受診が先延ばしになることもあります。

ただし、もの忘れがあるからといって、必ずしも認知症とは限りません。加齢によるもの忘れ、軽度認知障害(MCI)、抑うつ、睡眠不足、薬の影響、身体の病気などが関係している場合もあります。原因を自己判断せず、気になる変化が続く場合は専門家へ相談することが大切です。


早めの気づきと相談が大切

早い段階で相談することには、認知機能の変化を引き起こしている原因を調べ、必要な治療や生活上の支援につなげられるという利点があります。

本人が自分の希望を伝えられるうちに、今後の暮らし方、医療や介護、財産管理などについて家族と話し合うこともできます。生活環境を整え、利用できる支援やサービスを早めに知ることは、本人と家族の安心にもつながります。

認知症の種類や症状に応じて、薬で症状を和らげられる場合があります。また、アルツハイマー病による軽度認知障害または軽度の認知症の一部では、病気の進行を遅らせることが期待される抗アミロイドβ抗体薬が治療の選択肢になる場合があります。ただし、すべての認知症に使用できるわけではなく、対象となるかどうかを判断するための専門的な検査が必要です。


家族が最初にできること

日常生活の変化を記録する

「いつから」「どのような場面で」「何が起きたか」を、できるだけ具体的に記録しておきます。本人を試すように何度も質問するのではなく、日常生活の中で気づいた変化を自然にメモすることが大切です。

次のような項目を記録すると、医療機関で状況を伝えやすくなります。

  • 同じことを尋ねる頻度
  • 約束や出来事を忘れた具体的な場面
  • 服薬、買い物、支払い、料理などへの影響
  • 道に迷う、時間や場所が分からなくなるといった変化
  • 意欲、性格、睡眠などの変化
  • いつから始まり、どのように変化しているか
  • 服用している薬や、最近の薬の変更
  • 発熱、食欲低下、転倒などの体調変化

こうした情報は診断を決めるものではありませんが、医師が状態や経過を評価する際の重要な参考になります。

まずはかかりつけ医に相談する

最初の相談先は、普段の体調や病歴、服薬状況を把握しているかかりつけ医で構いません。気になる変化を伝え、必要に応じて、もの忘れ外来、脳神経内科、精神科、老年内科、認知症疾患医療センターなどへの紹介を依頼します。

かかりつけ医がいない場合は、もの忘れ外来のある医療機関へ直接相談する方法もあります。受診には予約や紹介状が必要な場合があるため、事前に確認しましょう。

地域包括支援センターを利用する

地域包括支援センターは、すべての市町村に設置されている、高齢者の保健・医療・介護・福祉に関する相談窓口です。

「どこを受診すればよいか分からない」「本人が受診を嫌がっている」「介護サービスについて知りたい」といった場合にも相談できます。本人が相談に同意しない場合は、家族だけで地域包括支援センターやかかりつけ医へ相談することもできます。


本人への接し方で大切なこと

初期の段階では、本人自身が変化を感じ、不安や戸惑いを抱えている場合があります。一方で、自分の変化に気づきにくい場合もあります。

失敗を責める、間違いを繰り返し指摘する、本人の話を強く否定するといった対応は、不安や混乱を強め、信頼関係を損なうことがあります。本人の気持ちや自尊心に配慮し、落ち着いた声で、短く分かりやすく話すことが大切です。

受診を勧めるときは、最初から「認知症の検査に行こう」と決めつけるのではなく、次のような声のかけ方も考えられます。

  • 「最近の体調を一度診てもらおう」
  • 「薬のことも含めて先生に相談してみよう」
  • 「私も一緒に行くから、健康チェックを受けてみない?」

本人が強く拒む場合は、無理に説得を繰り返さず、信頼している家族やかかりつけ医から声をかけてもらう方法もあります。


急な変化には注意する

認知症による変化は、多くの場合、月単位から年単位で徐々に現れます。数時間から数日のうちに急に会話がかみ合わなくなった、ぼんやりしている、夜間に混乱する、幻覚が現れたといった場合は、認知症ではなく「せん妄」の可能性があります。

せん妄は、感染症、脱水、薬の副作用、便秘、痛みなどによって起こることがあり、早急な医療的評価が必要です。また、顔や手足の片側に力が入らない、ろれつが回らない、突然言葉が出なくなった、激しい頭痛がある場合は、脳卒中の可能性があるため、直ちに救急要請(119)を検討してください。


生活上の安全も確認する

相談や受診と並行して、次のような生活上の危険がないかも確認します。

  • 薬の飲み間違いや飲み忘れ
  • 火の消し忘れ
  • 自動車運転中の迷いや事故
  • 詐欺や不要な契約、金銭管理の問題
  • 外出先から帰れなくなること
  • 転倒や食事の取り忘れ

危険が差し迫っている場合は、診断を待たず、家族、かかりつけ医、地域包括支援センターなどと対応を相談してください。安全を確保する際も、可能な限り本人の意思と尊厳を尊重することが大切です。


まとめ

「もしかして認知症かも」と感じたら、まず日常生活の変化を具体的に記録し、かかりつけ医や地域包括支援センターへ相談しましょう。

もの忘れの原因は認知症だけではありません。早めに相談することで、原因を確認し、必要な治療や生活支援、今後の準備につなげることができます。本人を責めたり決めつけたりせず、不安に寄り添いながら、一緒に対応を考えていくことが大切です。

※STARTWELLは、病気の診断・治療・予防を目的とするものではありません。本記事は一般的な情報提供を目的としており、医師などの専門家による診断や助言に代わるものではありません。


ナースアンドクラフト株式会社 広島県呉市大崎下島を拠点に、訪問看護・予防医療・デジタルヘルスを組み合わせた地域医療インフラの構築に取り組んでいます。 2026年 ASEANハイレベル会合登壇|2024年 アジア健康長寿イノベーション賞 テクノロジー&イノベーション部門 大賞受賞

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