訪問看護事業者が直面する経営課題
訪問看護事業は、医療保険・介護保険を基盤とする公定価格のビジネスモデルです。利用者のケアに真摯に向き合う事業者ほど、スタッフの確保・定着、移動コスト、24時間対応体制の維持など、収益を圧迫する構造的な課題を抱えています。
診療報酬・介護報酬の改定のたびに収益環境が変化し、「質の高いサービスを提供していても、経営が安定しない」という声は少なくありません。
こうした状況のなかで、保険外サービス(自費サービス)を組み合わせた収益の多角化が、訪問看護事業者にとって重要な経営戦略のひとつとして注目されています。
保険外サービスとは何か
保険外サービスとは、医療保険・介護保険の適用外で提供するサービスのことです。利用者が全額自己負担するため、価格設定の自由度が高く、保険制度の制約を受けない形でサービスを設計できます。
訪問看護事業者が提供できる保険外サービスの例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 健康相談・生活アドバイス
- 予防的な健康モニタリング
- 介護保険認定前の見守り・生活支援
- 家族向けの介護指導・相談
- フレイル予防プログラム
- ウェアラブルデバイスを活用した生活データの継続モニタリング
特に「介護保険認定を受けていないが、不安を抱える高齢者やその家族」は、保険外サービスの有力なターゲットです。この層は、現行の制度では十分に支援が届きにくい「空白地帯」でもあります。
なぜ今、保険外サービスなのか
介護保険の「前段階」へのニーズが高まっている
日本では、要介護認定を受けるまでの段階にある高齢者が増加しています。認定を受けていないため公的サービスの利用は限られますが、本人・家族としては「何かあったときに気づいてもらえる仕組みが欲しい」というニーズを持っています。
このニーズに応えられるのが、訪問看護事業者が持つ「医療・看護の専門性」と「継続的な訪問による関係性」です。保険制度の枠外で、この強みを活かすことができます。
利用者との継続的な関係を維持できる
要介護認定を受けていない段階から関わることで、認定後にそのままサービスにつながるケースが生まれます。利用者との長期的な関係構築が、安定した収益基盤につながります。
自治体・地域包括支援センターとの連携強化につながる
予防的な見守りや健康モニタリングに取り組む事業者は、自治体や地域包括支援センターからの信頼を得やすくなります。地域の予防ヘルスケアの担い手として認識されることで、行政との連携機会も広がります。
保険外サービスを始める際の注意点
医療行為との区別を明確にする
保険外であっても、医師の指示なく行える医療行為には制限があります。看護師が行える範囲を正確に把握したうえでサービスを設計することが必要です。
価格設定と収益性の検討
サービスの内容・提供頻度・スタッフの稼働コストを踏まえた適切な価格設定が重要です。利用者の支払い意欲と事業としての採算性を両立させることが求められます。
医療・ケアに関する説明と同意
保険外サービスであることを利用者・家族に丁寧に説明し、書面での同意取得を徹底することが、トラブル防止と信頼構築につながります。
ウェアラブルデバイスを活用した予防モニタリングという選択肢
保険外サービスのひとつとして、近年注目を集めているのがウェアラブルデバイスを活用した継続的な健康モニタリングです。
スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスを利用者に装着してもらい、歩数・睡眠・安静時心拍数などのデータを継続的に取得します。専門スタッフがデータの変化を観察し、気になるサインが見られた際には電話や訪問でフォローするという仕組みです。
ナースアンドクラフト株式会社の「STARTWELL(スタートウェル)」は、このアプローチを事業者向けのサービスモデルとして提供しています。訪問看護事業者や在宅介護事業者がSTARTWELLを導入することで、保険外の予防的見守りサービスとして既存の事業に付加価値を加えることができます。
STARTWELLを導入した事業者のメリット
- 介護保険認定前の利用者・家族との関係を継続できる
- データに基づいた「見える化」により、家族への安心感を提供できる
- 自治体や地域包括支援センターへの提案力が高まる
- 保険外収益の新たな柱をつくることができる
まとめ
訪問看護事業者が保険外サービスで収益を多角化することは、経営の安定化だけでなく、介護保険の「前段階」にいる高齢者への支援を広げる意義もあります。
医療・看護の専門性を活かした予防的な見守りサービスは、利用者・家族・地域から必要とされる存在感を高め、地域の信頼を積み重ねる機会にもなります。
まずは小さく始め、実績を積みながら事業として育てていくアプローチが現実的です。
ナースアンドクラフト株式会社 広島県呉市大崎下島を拠点に、訪問看護・予防医療・デジタルヘルスを組み合わせた地域医療インフラの構築に取り組んでいます。 2024年 アジア健康長寿イノベーションアワード テクノロジー&イノベーション部門 グランプリ受賞